就職活動やキャリアの場面で、
「あなたの強みは何ですか?」
「これまでにうまくできたことを書いてください」
そう言われて、手が止まった経験はありませんか?
私はこの場面で悩む人を、何度も見てきました。
そして同時に、こうも思っています。
書けないのは、能力がないからではありません。
シートの“読み方”がズレているだけです。
この記事では、
私たちプロが自己PRシートのどこを見て、何を読み取っているのか、
そして、なぜ「強みを書こうとするほど苦しくなるのか」を、構造的に説明します。
私たちは「何が書いてあるか」より「どう語られているか」を見る
多くの人は、自己PRシートを
「正解を書かなければいけない紙」だと思っています。
でも、プロの視点は少し違います。
私たちが見ているのは、
- どんな言葉を選んでいるか
- どこを成功として切り取っているか
- どこをわざわざ説明しているか
つまり、その人の“世界の見え方”です。
自己PRには、
本人が無意識に信じている「世界の前提」が、必ず滲み出ます。
①「本当はダメだったけど、運良く…」は世界観のサイン
自己PRで、こんな書き出しを見かけることがあります。
- 「本当は満席だったのですが、直前にキャンセルが出て…」
- 「普通なら失敗する状況でしたが、たまたま助けられて…」
一見すると謙虚で、誠実にも見えます。
でも、私はここに世界観を読みます。
「物事は基本的にうまくいかないもの」
「成功は例外で、ラッキーな出来事」
そう信じている世界です。
もし世界を「基本的にスムーズに進むもの」だと見ていれば、
うまくいかなかった時に「残念だった」と感じるはずです。
わざわざ「本来はできなかったはず」という前置きを置くのは、
うまくいかない世界を生きている感覚の表れです。
これは欠点ではありません。
ただ、「今どんな世界を見ているか」のヒントです。
②「優勝できた」「選ばれた」に滲む、自信の置きどころ
次に注目するのが、
成果を語るときの、ほんの小さな言葉の違いです。
例えば、
- 「優勝した」ではなく「優勝できた」
- 「結果を出した」ではなく「選ばれた」
この違い、かなり大きい。
「〜できた」という表現には、
自分でも予期していなかった成功というニュアンスが含まれます。
また、「選ばれた」に焦点が当たる場合、
無意識に結果そのものへの自信が置かれていないことがあります。
ここで大事なのは、
「自信がないからダメ」という話ではありません。
どこに自信を置いて生きてきたかを知ることが、自己理解です。
③「秘密基地づくり」は“安心”を求めたサインかもしれない
子どもの頃の遊びを書く欄に、
「秘密基地づくり」と書かれていることがあります。
私は、この一文にとても多くの情報を感じます。
基地とは、そもそも安全な場所です。
それを「自分で作る」ことに夢中になったということは、
- 日常の中で安心が足りなかった
- 守られる感覚を自分で補う必要があった
そんな可能性を含んでいます。
これは弱さではありません。
「心理的安全性」に対する感度の高さであり、
環境さえ合えば、非常に力を発揮する特性です。
④「楽しかった」は、成果の代用品かもしれない
自己PRに、
「〇〇が楽しかった」
「〇〇が好きだった」
と書かれることがあります。
多くの場合、これは
客観的な成果がないと感じたときの“代用品”です。
結果ではなく、感情で欄を埋めている状態。
ただし、ここには大事な例外があります。
人の感情を動かすこと自体が成果の人です。
誰かを安心させた、場を和ませた、
人が前向きになった。
そうしたタイプの人にとって、
「楽しかった」は立派なアウトカムです。
だからここで問うべきは、
「成果がないから感情を書いているのか」
「感情を生み出すことが成果なのか」
この違いを見極めることです。
⑤ 一番の強みは、だいたい“書かれていない”
最後に、私が一番伝えたいことです。
あなたの本当の強みは、シートに書かれていない可能性が高い。
なぜなら、強みとは
あまりに当たり前すぎて、
自分では価値だと認識していないもの
だからです。
人は、珍しくて、感情が動いた出来事を書きます。
でも本当に価値があるのは、
- 毎回そうしていること
- 努力している感覚すらないこと
- 気づいたら人に頼られていること
そこは、本人にとって空気のようなものです。
だから、書かれません。
まとめ|自己PRは「盛る作業」ではなく「読み直す作業」
自己PRシートは、
自分を良く見せるための紙ではありません。
自分の世界の見え方を、言葉から読み解くための素材です。
もし今、自己PRが苦しいなら、
無理に書き足さなくていい。
一度、こう問い直してみてください。
「私は、どんな前提でこの世界を見てきたんだろう?」
そこに気づいた瞬間、
“強み探し”は、自己否定の作業ではなくなります。
